ミノキシジルタブレットが厚生労働省に承認されていない理由
ミノキシジルタブレットは内服によって体内から成分を吸収することから、外用薬のミノキシジルよりも高い効果が得られるとして人気があるAGA治療薬です。
しかし、その有用性にもかかわらず、現時点ではまだ厚生労働省から承認されていません。
外用薬のミノキシジルは承認されているのに、ミノキシジルタブレットはなぜ承認に至っていないのか。
その点について今回は解説します。
厚生労働省から見たミノキシジル
厚生労働省は度々、ミノキシジルに関しての資料や文書を発行しています。
まずは、ベースとなるミノキシジルが厚生労働省からどう見られているのかをチェックしましょう。
ミノキシジル配合のリアップが1999年6月に発売されましたが、同年の11月9日に「ミノキシジルと動悸・胸痛等について」という報道資料を公表し、その中でリアップ使用に当たっての注意喚起を行いました。
ミノキシジルと動悸・胸痛等について
該当商品名: リアップ(大正製薬)
発売後4ヶ月間の出荷本数: 約400万本
ミノキシジル1%含有ローションは、本年6月より薬局薬店において販売が開始された。海外での使用成績調査において、動悸、胸痛の発現が報告されていたことから「使用上の注意」に記載し注意喚起を行ってきたところであるが、発売後国内においても、本剤使用後に動悸、胸痛を経験したとする報告があるため、消費者への注意を一層喚起することとした。
ここではリアップ使用に当たり「動悸、胸痛」についての発現について消費者に注意するよう呼び掛けています。
さらに、1999年12月3日に「ミノキシジルの安全使用の徹底について」という報道資料にて再度ミノキシジルの副作用について言及しています。
ミノキシジルの安全使用の徹底について
2. 対応策
ミノキシジルと循環器系の副作用との関連性については、米国において行われた約20,000例の疫学調査で関連がないとの結果が得られており、直ちにミノキシジルとの関係を疑うことは難しいと考えられる。しかしながら、報告された症例は狭心症、高血圧等循環器系の既往のある者が多かったことから、「高血圧、低血圧で現在治療を受けている人」及び「狭心症等、心臓に障害のある人」に対する安全使用の徹底を図るため、以下のような対応を行うこととした。
(1)(社)日本薬剤師会及び各都道府県を通じ、薬局等において購入者に対し既往歴等の確認を行い販売するよう指導を徹底する。
(2) 製造業者に対し、外箱の表示等を改善し、狭心症、高血圧等の既往のある者は、購入前に医師・薬剤師に相談するよう注意喚起を徹底する。
その中で、動悸、胸痛等が起きた場合は使用中止を呼びかけると共に医師や薬剤師に相談するよう再度注意喚起を行っています。
一方で、副作用とミノキシジルの関連性については情報不足のため関連があるかどうか現時点では評価できないことも説明しています。
アメリカが行った調査ではミノキシジルと循環器系の副作用の関連性について否定する結果がでた事を踏まえつつ狭心症や高血圧等の症状を持つ方々に副作用が発現したことを受けて、製造業者や医師、薬剤師からも徹底した指導を行うよう呼び掛けました。
ミノキシジルの副作用に対して慎重な対応
ミノキシジルの安全性については、その後も審議および調査が行われておりますが、2014年時点では、高濃度のミノキシジルによる刺激性の増加が副作用に影響している可能性も考えられるものの、適応部位の皮膚に重篤な症状がみられないことや既に注意喚起を行っていることから特別な対応は行われていません。
しかしながら、副作用とミノキシジルの濃度の関連性が結論付けられていないこと、心不全という重篤な副作用症状が1例ながら症例として発生したことを受け、その後発売された「リアップX5」についても第一類医薬品(副作用等の発現によって日常生活に支障をきたすレベルの健康被害がでる可能性がある医薬品の中でも特に注意が必要なもの)として扱うことを決定しました。
これらのことからミノキシジルに対して、かなり慎重な対応を取っているのがお分かりいただけるかと思います。
外用薬のミノキシジルで既にこの状態なので、さらに成分が吸収されやすい内服薬タイプのミノキシジルタブレットについては、より慎重に審査されるのも当然と言えます。
ミノキシジルタブレットがなぜ承認されないのか
ミノキシジルタブレットは厚生労働省から承認されていない理由としては先述の通り、副作用と濃度の関連性や1例ながら重篤な副作用症状が発現したことが、少なからず影響していると考えられます。
しかし、原因はそれだけではありません。
意外に思われるかもしれませんがミノキシジルは開発初期の時点では、内服薬として開発されています。
いわばミノキシジルタブレットが原型ということです。
もともとミノキシジルというのは、1960年代に高血圧治療のための内服薬として開発されました。しかし服用した患者たちに脱毛症状の改善がみられたことから脱毛症治療薬として再開発が行われた経緯があります。
その中で、服用に当たり副作用の発現が見られたため、副作用症状を軽減させる措置として外用薬へと形態が変更になったのです。
外用薬としてのミノキシジルよりも内服薬のミノキシジルタブレットの方が安全性に欠けることがこのエピソードからも伝わってきます。
いくら効果が高くても、副作用のリスクが高い医薬品である以上、厚生労働省の承認を受けるにはクリアしなければならない課題が多く残ります。
それらを解決した暁には承認がおりる可能性もありますが、現時点ではまだ不透明となっています。
アメリカ食品医薬品局の対応
それでは、いったんここで国外におけるミノキシジルタブレットの扱いについてみてみましょう。
ミノキシジルタブレットはアメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administration)に承認されています。
承認自体はされていますが、USP(米国薬局方に基づく医薬品に関する品質規格書)の中で
ミノキシジルタブレットが強力な抗高血圧剤であること、副作用として心膜滲出や心臓の拍動が阻害(心タンポナーゼ)され狭心症が悪化する可能性があることを明記しています。
(出典:
外用薬タイプのミノキシジルでは循環器系の副作用との関連性について否定されていましたが、ミノキシジルタブレットについてはそれを否定していません。
また、USPの中で動物実験の中で出血性病変や心外膜炎など重篤な副作用症状が起きたことについても触れています。
これらのリスクを踏まえつつ、有用性を考慮し、アメリカ食品医薬品局ではミノキシジルタ ブレットを薄毛治療薬として承認しています。
安全性を優先して承認を行わない厚生労働省と
有用性を考慮して承認を行ったアメリカ食品医薬品局で対応は正反対となっています。
日本国内におけるミノキシジルタブレットの利用
厚生労働省からミノキシジルタブレットが承認されるのはまだ時間がかかりそうですが、その有効性を試したいという方は多いと思います。
実際、日本でもミノキシジルタブレットが手に入らないわけではありません。
主な入手方法としては2つあり、1つは医師に処方してもらう方法、もう一つは個人輸入で購入する方法があります。
ただし、個人輸入については偽薬や品質の無保証等リスクがありますし、輸入数量についても制限がかかっています。
ミノキシジルを含有した育毛剤の個人輸入手続は、どのようなものか。
ミノキシジルの含有量が5%を超えるもの(劇薬)は用法・用量からみて1か 月分以内、また、含有量が5%以下のものは用法・用量からみて2か月分以内で あれば、税関限りの確認で通関可能です。この範囲を超える場合は、薬監証明 の取得が必要です。
継続した治療のためには、定期的に個人輸入を行う必要があり手間もかかります。
その点を考慮すると、国内のクリニックで処方を受けたほうが安全性も高いですし、副作用症状が起きた時もすぐに相談できて安心なのではないでしょうか。
まとめ
使用にあたり、メリット・デメリットの両方が存在するのがミノキシジルタブレットです。
厚生労働省の慎重な姿勢も、安全性を考えればこそと言えます。
ミノキシジルの研究が進めば、評価が変わってくることもあり得ますので今後の展開に期待しましょう。
ミノキシジルタブレットやミノキシジルについては、こちらもぜひご覧ください。
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