フロジン外用液の効果と副作用とは

AGA治療
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AGAや円形脱毛症などに対し、各種クリニックでは薄毛の状態や脱毛の進行状態に合わせて様々な治療薬が処方されています。

そのひとつがフロジン外用液(フロジン液)です。
名前を聞いたことがないという方も多いかもしれませんが、1969年から現在まで長きにわたり使用されている血管拡張作用を持った医薬品です。

今回はフロジン外用液の効果や副作用について解説します。

フロジン外用液(フロジン液)とは

フロジン外用液とは1969年に発売された脱毛症・白斑の治療薬であり、ニプロファーマ株式会社を製造販売元、第一三共株式会社を販売元としています。

元々は「フロジン液」として扱われていましたが、医療事故防止対策のため2008年からは「フロジン外用液5%」として販売されるようになりました。
有効成分としてカルプロニウム塩化物を含み、脱毛が気になる部分に塗り込むことで血管拡張作用を示します。

フロジン外用液(フロジン液)の効果

円形脱毛症

それではフロジン外用液にはどのような効果があるかをみていきましょう。

フロジン外用液の適応症

フロジン外用液は以下の疾患に対して保険適応を持ちます。

○円形脱毛症(多発性円形脱毛症を含む)
びまん性脱毛症
○悪性脱毛症
○粃糠性脱毛症
○壮年性脱毛症
○症候性脱毛症
○乾性脂漏
○尋常性白斑

フロジン外用液は多くの皮膚疾患に対する適応をもちます。主に円形脱毛症の患者さんに処方されることが多く、円形脱毛症以外にも様々な脱毛を伴う症状の治療薬として用いられています。
このように、円形脱毛症をはじめとした様々な脱毛の治療薬として長年処方され続けているフロジン外用液ですが、効き目については穏やかな効果となっており脱毛症状に対して効果を発揮するのに数カ月かかることもあります。残念ながら即効性はありませんが、じっくりと頭皮の血行を促進して発毛および育毛しやすい頭皮環境へと整えていきます。

フロジン外用液の特徴と使用方法

フロジン外用液は1本30mLの容器に入っています。薬液は緑色をしており、特有の臭いがします。

フロジン外用液を脱毛症に用いる場合は、1日2~3回、適量を患部に塗布するか、毛髪部全体にふりかけます。
塗った後の頭皮や髪のべたつきや臭いが気になるという方もいるので使用感については好みが分かれるかも知れません。

また、塗った後は頭皮がヒリヒリすることが多いですが、これは薬の効き目によるものであり心配いりません。塗布後に頭皮をマッサージするとさらに効果が高まると言われています。

フロジン外用液は目に入るとしみるため、塗布時には液垂れに注意する必要があります。万一、眼に入ったときはすぐに清浄水で洗眼します。

フロジン外用液(フロジン液)の薬価

処方箋

フロジン外用液の1mL当たりの薬価は30.3円で、同成分を含むジェネリック医薬品のアロビックス外用液5%は薬価12.3円となっており、フロジン外用液とアロビックス外用液を比べると高めに設定されていますが市販薬を使うよりはリーズナブルではないでしょうか。保険適応で処方された場合の薬代は、1ヵ月で2本用いた場合で約545円(3割負担の場合)になります。

なお、第一三共ヘルスケアより販売されているカロヤンシリーズにもフロジン外用液と同じくカルプロニウム塩化物が含まれていますが、処方薬であるフロジン外用液よりも濃度が薄くなっています(1%~2%程度)。
カルプロニウム塩化物配合の市販品で十分な効果を実感できなかった場合は、フロジン外用液の使用を検討してみてもいいかもしれません。

フロジン外用液のジェネリック医薬品「アロビックス外用液」

上記の通り、フロジン外用液にはジェネリック医薬品として「アロビックス外用液」があります。
こちらはジェネリック医薬品という事で1mL当たりの薬価は12.3円となっているので、選択によってはより治療費を抑えることができると言えます。
フロジン外用液で治療を行う場合には、こちらを視野に入れてみるのもおすすめです。

フロジン外用液(フロジン液)の有効成分「カルプロニウム塩化物」とは

フロジン外用液のイメージ画像

フロジン外用液の有効成分はカルプロニウム塩化物と呼ばれる、アセチルコリンに良く似た構造を持つ化合物です(フロジン外用液にはその他に添加物として、プロピレングリコール、dl-リンゴ酸、水酸化ナトリウム、エタノール、黄色4号(タートラジン)、青色1号、香料を含みます)。

カルプロニウム塩化物の作用機序

フロジン外用液の薬理作用は、主成分であるカルプロニウム塩化物の働きにより発現します。
以下にその仕組みを解説いたします。

人体には交感神経と副交感神経という2種類の自律神経が存在し、様々な生理機能を調節しています。この自律神経のうち、副交感神経が興奮するとアセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質が分泌されます。

アセチルコリンが頭皮毛細血管平滑筋に存在するアセチルコリン受容体に結合すると、毛細血管が拡張して血流が増加します。

カルプロニウム塩化物はこのアセチルコリンと類似した構造を有するため、カルプロニウム塩化物がアセチルコリン受容体と結合することでアセチルコリン同様に毛細血管拡張作用をもたらします。

毛根の毛乳頭周辺部の毛細血管が拡張すると、血流が増加して多くの酸素や栄養分が毛乳頭に行き渡ります。毛乳頭に栄養が供給されると毛母細胞の増殖が活発になり、発毛が促進されると同時に抜け毛も抑制されます。

こうした一連の作用機序により、円形脱毛症、AGA、FAGA(びまん性脱毛症)をはじめとした各種の脱毛症状に対して効果を発揮するのです。

さらに、動物試験ではカルプロニウム塩化物がアセチルコリンより約10倍も強力に局所血管を拡張させることも確認されていることから、ヒトに対しても強い作用を持つと推測されます。

また、アセチルコリンはコリンエステラーゼという酵素に分解されることでその作用が消失しますが、カルプロニウム塩化物はコリンエステラーゼに抵抗性があるため、アセチルコリンよりも長時間に渡って作用が持続します。

フロジン外用液は毛髪に対してこうした作用を有しており、薬価も安く、副作用の心配も少ないため、円形脱毛症の治療に良く用いられます。性別に関係なく使用できる点も優れており、円形脱毛症の人が初めて受診すると最初に処方されることが多い薬です。

フロジン外用液(フロジン液)でAGAやFAGA(びまん性脱毛症)の治療は可能か?

次に、フロジン外用液のAGAやFAGA(びまん性脱毛症)に対する効果はプロペシアやミノキシジルと比べるとどの程度のものかをみていきましょう。

実は、フロジン外用液の有効成分である塩化カルプロニウムは日本皮膚科学会のAGA診療ガイドラインではC1という上から3番目のランクに分類されています。

AGA診療ガイドラインとは、日本皮膚科学会が科学的な根拠に基づいて各種のAGA治療法を評価し、A、B、C1、C2、Dの5つのランクに分類したものであり、このうちC1は「十分な根拠がない」という評価になります。

もちろん全く効果がないと言うわけではありませんが、AGAやFAGA(びまん性脱毛症)の方にはさらにエビデンスレベルの高い、ランクA=「行うよう強く勧められる」のフィナステリド(男性のみ)やミノキシジル、ランクB=「行うよう勧められる」の自毛移植などの治療法を用いる方がより効果的であると言えます。

ミノキシジルはフロジン外用液と同じく頭皮の血行を促進する効果がありますが、AGA治療においては上記の通りフロジン外用液よりもミノキシジルの推奨度が高くなっていますがこれには理由があります。
フロジン外用液と作用自体は類似していますがミノキシジルには血管内皮増殖因子(VEGF)など髪の毛を作る細胞を活性化させる成長因子の生産促進効果があるため優先度が高くなっています。

ただし、ミノキシジルについては効果が高い一方で副作用のリスクがフロジン外用液よりも高まります。円形脱毛症など脱毛の原因によっては副作用の少ないフロジン外用液がが推奨される場合もあるので、医師の指示に従うようにしましょう。

また、フロジン外用液の有効成分であるカルプロニウム塩化物にはAGAの原因となるジヒドロテストステロン(DHT)を抑制する作用は無いので、かなりAGAの症状が進行している場合にはフロジン外用液よりもジヒドロテストステロンの抑制作用があるフィナステリドやデュタステリドを配合した治療薬(プロペシア、ザガーロ等)を使用したほうが効率よく治療することができると言えます。

フロジン外用液(フロジン液)の副作用

フロジン外用液は局所作用を持つ外用薬のため、全身性の重大な副作用が発現する可能性は低いと言えます。
このため、副作用の問題からミノキシジルやフィナステリドなどを服用できない方でも比較的安心してお使いいただくことができます。

しかし、フロジン外用液にも頻度や重症度は低いものの複数の副作用が報告されているため、医師や薬剤師の指示に従い、正しい使用方法を守ることが大切です。

フロジン外用液の主な副作用としては以下の2つがあります。

(1)過敏症(発生頻度:0.1~5%未満)
(2)アセチルコリン様作用(発生頻度:0.1~5%未満)

(1)の過敏症とは頭皮のフロジン外用液を塗布した部分が一時的に赤くなったり痒くなったりすることです。

これはフロジン外用液中に含まれる有効成分やその他の添加物が抗原となって生じるアレルギー反応であり、発症する頻度や程度には個人差があります。

アトピー体質や敏感肌の方などは過敏症が起こる可能性が高くなるため、使用前に医師や薬剤師に相談すると良いでしょう。また、こうした副作用は初回使用時に起こりやすいので、初めて用いる際は特に注意を払う必要があります。

(2)のアセチルコリン様作用とは、副交感神経興奮時に分泌されるアセチルコリンが引き起こす生理反応と類似した反応のことです。

フロジン外用液の主成分はカルプロニウム塩化物と呼ばれる化合物ですが、このカルプロニウム塩化物はアセチルコリンと良く似た構造をしています。

このため、カルプロニウム塩化物がアセチルコリンの代わりに生体内のムスカリン受容体と呼ばれる受容体に結合することで、副交感神経興奮時と同じ生理反応が引き起こされることがあります。

具体的には、刺激痛、局所または全身性の発汗、熱感、心拍数減少、悪寒、戦慄、嘔気、嘔吐、末梢血管拡張、腸蠕動亢進、気管収縮、子宮収縮、腺分泌亢進、縮瞳、眼圧低下といった症状が現れることがあります。

こうした全身性の副作用が生じることは滅多にありませんが、万一、使用後に異常を感じた場合は直ちに使用を中止し、使用部位を水で洗い流します。また、しばらくたっても症状が治まらないようならば、医師や薬剤師に相談する必要があります。

フロジン外用液のイメージ画像

フロジン外用液をお風呂に入った後の頭皮血管が拡張した状態で使用すると、副作用が強く現れやすくなるため、入浴直後は使用を避けるようにします。

また、高齢者の方では生理機能が低下しており副作用が発現しやすいため、使用する際は低用量から用いるなど注意する必要があります。

フロジン外用液の副作用は承認前に調査した359例中、34例(9.5%)で報告されており、主なものは局所発汗11例、そう痒感7例でした。

また、承認後の調査では1456例中、43例(3.0%)で報告されており、主なものは局所発汗17例、そう痒感11例でした。

これらの報告からも、副作用はいずれも軽度であり、使用に際して過剰に心配する必要はないと言えます。

まとめ

フロジン外用液は、AGAやFAGA(びまん性脱毛症)に対してより効果的な治療を行いたい方にとっては少し不満を感じるかもしれません。しかしその一方で、副作用によりフィナステリドやミノキシジル等の治療薬が使用できない場合は、心強い治療薬のひとつになると言えます。

薄毛治療については長期的な投薬が必要となるケースが多いため、効果の高さも重要ですが、自分にとってできるだけ負担の少ない治療薬を選ぶというのも大事なポイントです。
効き目の強さだけでなく副作用や、薬価などにもぜひ目を向けてみてください!

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