ノコギリヤシの育毛効果とは?摂取と活用のポイント

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薄毛やハゲ、そしてAGA(男性型脱毛症)の予防や改善に効果があると言われるノコギリヤシ。
フィナステリド(プロペシア)と同じくAGAの原因となるジヒドロテストステロンを抑制する効果があることから、育毛効果が期待できるとしてサプリメントや育毛シャンプー、育毛剤等に用いられています。
今回は、このノコギリヤシの育毛効果や副作用等について解説します。

ノコギリヤシとは

ノコギリヤシ

ノコギリヤシとは北米の南東部に自生しているヤシ科の植物であり、ギザギザしたノコギリの歯のような葉をもつことにちなんで命名されています。

ノコギリヤシは古くから民間療法として用いられており、前立腺肥大に伴う泌尿器症状、慢性骨盤痛、性欲減退、前立腺癌などの症状に対して使用されてきました。現在でも錠剤、カプセル、抽出液、お茶などの様々な形態で市販されています。

また、ノコギリヤシには薄毛や抜け毛に対する改善効果があると言われており、育毛目的で摂取されることも多々あります。

特に亜鉛と組み合わせて摂取すると薄毛の改善に効果的であるとされ、ノコギリヤシ+亜鉛をセットにした育毛サプリメントも販売されています。

フィナステリドやミノキシジルといった医薬品と比べると安価であり、ドラッグストアなどでも手軽に入手できることから、軽度の薄毛の方などに良く用いられる傾向があります。

ノコギリヤシの効果

ノコギリヤシにはAGAの原因「5αリダクターゼ」を抑制する効果がある

ジヒドロテストステロンのイメージ

ノコギリヤシが前立腺肥大の予防や薄毛、抜け毛に効くとされる理由は、ノコギリヤシの5αリダクターゼ阻害作用にあります。

薄毛を発症させる主要な原因の一つに、テストステロン(TH)と呼ばれる男性ホルモンの作用があります。テストステロンは5αリダクターゼと呼ばれる酵素の働きにより、ジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、このジヒドロテストステロンが毛乳頭細胞のDHT受容体に結合することで、TGF-βと呼ばれるサイトカインが産生され、薄毛が進行するとされています。

このため、ノコギリヤシが5αリダクターゼの働きを阻害すれば、テストステロンからジヒドロテストステロンへの変換が抑制されるため、脱毛の発症を抑えることになります。

ノコギリヤシが頭皮の炎症を抑え、育毛環境を整える

頭皮の炎症

さらに、ノコギリヤシには頭皮の炎症を抑える効果もあると言われています。

頭皮において皮脂が過剰に分泌されると毛穴が塞がれて炎症をおこし、毛髪の発育が阻害されてしまいます。頭皮の炎症にはロイコトリエンと呼ばれる生理活性物質が関与していますが、ノコギリヤシはこのロイコトリエンの働きを阻害することで頭皮の炎症を抑え、正常な毛髪の育毛環境を整える働きをすると言われています。

ノコギリヤシと亜鉛の併用

亜鉛

ノコギリヤシのサプリメント等については、よく「亜鉛」と一緒に摂取ると良いと言われます。なぜ亜鉛?と思う方も多いと思いますが、実は亜鉛自体にもノコギリヤシと同様に育毛効果があるとされています。

私たちの毛髪の90%はケラチンと呼ばれるタンパク質から構成されています。ケラチンは18種類のアミノ酸を材料として体内で合成されますが、亜鉛はこのケラチンの合成をサポートする役割を果たしています。

亜鉛のもう一つの育毛作用として、AGAの原因となる5αリダクターゼ阻害作用があります。これは、ノコギリヤシと同様の作用であり、5αリダクターゼの阻害により、テストステロンからジヒドロテストステロンへの変換を抑制することで脱毛を予防するとされています。

このようにノコギリヤシには脱毛予防効果があり、また、亜鉛には脱毛予防効果+発毛促進効果があるとされているため、ノコギリヤシと亜鉛を組み合わせることでより効果的に薄毛の対策や改善できると考えられています。

ノコギリヤシに育毛効果がないという声も

ノコギリヤシ自体に、育毛効果を期待できる作用があることは事実です。
しかし、ノコギリヤシや亜鉛は育毛用サプリメントとして広く認知されている一方で、これらの効果を疑問視する声も上がっています。

ノコギリヤシと男性ホルモン

臨床試験のイメージ

ノコギリヤシの育毛効果が疑問視されている原因のひとつとして「男性ホルモンの抑制」が挙げられます。

ノコギリヤシは男性ホルモンの働きを抑制することから前立腺肥大症に効果があるとされ、実際に数多くの臨床試験が行われていますが、その効果に否定的な結果が報告されている例も少なくありません。

2006年に米国国立衛生研究所(NIH)の助成により実施された臨床試験では、良性前立腺過形成(BPH)の男性225人にノコギリヤシ320mgとプラセボのいずれかを1年間投与しましたが、ノコギリヤシ投与群でプラセボ投与群と比較して有意な前立腺肥大症の改善効果が認められませんでした。

また、2011年にアメリカ国立補完統合衛生センターが共同で実施した臨床試験でも、良性前立腺過形成(BPH)の高齢男性369人にノコギリヤシを最大320mg投与したところ、プラセボ投与群と比較して有意な前立腺肥大症の改善効果が認められなかったと報告されています。

これらはあくまでも前立腺肥大症の改善効果についての試験ですが、AGAも前立腺肥大症も男性ホルモンが影響していることから前立腺肥大症に効果が無いのならば、AGAに対しても効果がないだろうという考え方ができるのです。男性ホルモンの抑制により効果を発現するというメカニズムは薄毛改善のメカニズムと共通しているため、育毛に対する効果も疑問視されうる結果と言えます。

さらに、ノコギリヤシの薄毛改善効果について検討した臨床試験はほとんど存在しておらず、フィナステリド(プロペシア)やミノキシジル等の薄毛治療薬と比べるとその効果における科学的根拠は乏しいのが実情と言えます。

先述の通り、ノコギリヤシにはAGAの原因となるジヒドロテストステロンを抑制する効果がありますが、同じ作用を持つフィナステリド(プロペシア)と比較した場合、どうしてもその評価は落ちてしまいます。

ノコギリヤシには本当に育毛効果があるのか

ノコギリヤシのサプリメント

それでは、ノコギリヤシを配合したサプリメントや育毛剤などに本当に育毛効果があるのでしょうか。

結論から先に言うと、育毛効果はありますがフィナステリド(プロペシア)やミノキシジル等の薄毛治療薬と同レベルの治療効果はありません。薄毛や抜け毛の症状が軽度の方であれば育毛効果を期待できます。

亜鉛との併用による相乗作用によりある程度の育毛効果は期待できるため、軽度の薄毛の方には適するかもしれませんが、過剰な期待はしないほうが良いと言えるでしょう。

ノコギリヤシの摂取に向いている方

ノコギリヤシは主に5αリダクターゼの働きを阻害することで効果を発揮すると言われていますが、これはフィナステリド(プロペシア)の作用と類似しています。

しかし、ノコギリヤシの薄毛に対する効果は臨床試験の結果により明確に示されたものではないため、医学的根拠の面ではフィナステリドに劣ると言えます。

したがって、万人にお勧めできる治療法ではありませんが、主に以下のような方では使用を検討する価値はあると言えます。

①薄毛の症状が軽度の方

軽度の薄毛

ノコギリヤシは治療薬と比べて効果が劣ると考えられるため、症状がそれほど進行していない軽度の薄毛に適するサプリメントと言えます。ドラッグストアやインターネットなどで手軽に購入できるのはメリットの一つです。

クリニックに通うなどの大がかりな治療には抵抗があると言う方は、まずはこうした治療法から始めてみるのも良いでしょう。薄毛が進行していない方がAGA対策として使うのもおすすめです。

②治療費を安く抑えたい方

治療費用

価格の安さもノコギリヤシのメリットと言えます。毎日ノコギリヤシのサプリメントを服用しても1ヶ月当たりの費用は1000~1500円程度であり、フィナステリドやミノキシジルでは1ヶ月当たり10000円程度の費用が発生することと比べるとはるかに安いと言えます。

経済面におけるメリットを重視する方にはノコギリヤシのサプリメントや育毛剤がおすすめです。

③治療薬による副作用が怖い方

副作用による血圧の変化

ノコギリヤシのメリットとして副作用がほとんどないことがあります。

一般に、フィナステリド(プロペシア)やミノキシジルなどの治療薬は効果が強い分、副作用のリスクも大きいとされています。

フィナステリドでは性機能の低下や肝障害などの副作用が報告されています。また、ミノキシジルでは多毛症、血圧低下、頭痛などの副作用が報告されており、心疾患の方や高齢の方の服用は適しません。

これに対して、ノコギリヤシでは胃の不快感などの軽度な副作用はあるものの、重大な副用が起こる可能性は極めて低く、幅広い年齢層の方が安心して服用することができます。

治療効果は低くても安全性を重視するという方にはノコギリヤシはお勧めの選択肢と言えるでしょう。

④FAGA(びまん性脱毛症)を改善したい方

FAGA(びまん性脱毛症)

フィナステリド(プロペシア)は副作用の面から女性には使用できない治療薬となっていますが、ノコギリヤシは男性だけでなく、女性でも摂取することができます。

ホルモンバランスの乱れによって男性ホルモンの作用が強まり、FAGAびまん性脱毛症)を発症してしまった方に対して、育毛効果が期待できます。

ノコギリヤシを使うか、プロペシアを使うかは慎重に検討を

治療薬を選択するイメージ

このように、ノコギリヤシは薄毛改善の選択肢の一つとして検討に値する成分と言えます。
しかし、効果も出ないのに漫然と使い続けているとせっかくの薄毛治療の機を逸することにもなりかねません。

効き目が見られるまでに個人差はあるものの、ノコギリヤシを半年ほど摂取しても改善の兆候が見られない場合は速やかに他の治療法に移行することをおすすめします。

また、薄毛の症状が重度である方や、強い改善効果を期待する方はノコギリヤシではなくフィナステリド(プロペシア)やミノキシジルなどの治療薬を用いることをおすすめします。

これらの治療薬は数多くの臨床試験により発毛に対する効果が証明されており、信頼に足るものです。医師の指導の下で正しく服用することで副作用のリスクも最小限に抑えることができるため、より確実な効果を求める方にはこうした治療薬の方が望ましいと言えます。

まとめ

ノコギリヤシは軽度の薄毛やハゲに対して育毛効果が期待できる半面で、脱毛症状がかなり進行している場合には効果を実感できないケースも多々あるため自分の状態に合わせて、使用を見極める必要があると言えます。
ノコギリヤシで治療を行う場合には亜鉛と併用して効果を増強する等の工夫を取り入れてみてください。

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